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ブルガリ・ウィザード

高級ブランド、ブルガリのアフターサービスにリテールテクノロジーの魔法を。当社では、ブルガリの腕時計修理サービスに関わる全工程を合理化できるアプリケーションの開発において、コンセプトの発案からデザイン設計までを担当しました。アプリケーションは、腕時計を預かってから修理を終え、顧客のもとに返却するまでのすべてのステップに対応しています。今ではブルガリの全スタッフが 自信を持って顧客対応にあたれるようになり、アフターサービスに伴う不安やストレスの軽減に成功しました。

アフターサービスの見直し

ブルガリのような高級ジュエリー・腕時計メーカーにとっては、製品の耐久性(ひいては顧客満足度)はプロの手による定期メンテナンスによって大きく左右されるため、トップレベルのアフターサービスを提供することは非常に重要な要素になっています。しかし、高級ブランドに対する顧客の期待値は高く、問題点の特定や解決までの迅速な対応が求められるなど、難しい課題でもあります。取り扱っている製品の複雑性から、実際にブティックなどの販売店で即座に提供できる回答はかなり限られており、完全な修理診断を行うにはサービスセンターに製品を送り、技術者による精密な検査が必要になることがほとんどです。

このような状況の打開策についてブルガリからご相談をいただき、当社では、ブルガリのスタッフが安心して顧客対応にあたれるよう、アフターサービスにおける多面的な問題点を掘り下げ、顧客とスタッフ間のやり取りを簡潔化・改善するためのアプリケーションのコンセプトとデザインの考案を担当しました。もう一つ重要なポイントとして、ブルガリではグローバルに展開できるソリューションを成功条件として定めていたため、様々な市場での使用を想定したものを検討する必要がありました。

本プロジェクトでは、日本と中国、二つの市場に重点を置き、徹底的な市場調査を行いました。同じアジアの国でありながら、両国におけるカスタマーサービスへの取り組み方やアフターサービスの実状については大きな隔たりがありました。そのため、両国でうまく機能できるアフターサービスソリューションであれば、ブルガリのグローバル・マーケットが直面する課題のほとんどに対応できると考えました。

ブルガリのアフターサービスの実状

第一の目標としては、腕時計のアフターサービスに関わる工程について、サービスセンターのキーパーソンに聞き取りを行うことでした。ブルガリが提供している腕時計メンテナンスには、ベーシックサービスとフルサービスの二種類があります。簡単な修理であればベーシックサービスを受けられ、分解修理が必要な場合はフルサービスになります。腕時計のコンディションを確認したあとにサービス価格を査定しますが、価格は腕時計のモデルによって異なるため、価格表を見ながら行うことになります。査定の結果、店舗スタッフが初回見積もりを出しますが、最終的なサービス内容や金額は、サービスセンターの技術者が点検してから確定されることになります。

理論上は単純なシステムのように聞こえますが、実際には以下に示すような様々な問題点を内在していました:

  • 腕時計のシリアルナンバーの対応表が何度も変わっていることや、長年の着用により番号が判読不能になり、モデルの特定が困難である
  • 経験の浅い店舗スタッフにとっては、故障の原因を特定し、適当なサービスを案内することが困難である
  • 紙面上のやり取りは人為ミスにつながりやすい(例:シリアルナンバーの写し間違えなど)

フロントラインスタッフの意見

サービスセンターでの情報収集を経て、今度は店舗の実状について目を向けることにしました。サービスセンターのスタッフから指摘された問題点の多くは、腕時計のモデル特定の難しさや適当なサービスの案内であったため、日本および中国のブルガリ店舗スタッフに対する無記名のアンケート調査を実施し、この課題の検証と解決案について検討しました。これは同時に、店舗スタッフがアフターサービスを提供する際に感じている最大の課題や難点について意見聴取できる機会でもありました。

日本市場について:

  • 回答者はよく訓練されており、腕時計のモデルの特定と正しく効果的な価格表の使い方ができていた
  • 回答者が感じている最大の課題は、問題点をすべて把握できていない状況で、サービス価格について説明・説得する必要があることだった

中国市場について:

  • 回答者は腕時計のモデル特定および価格表の使い方に困難を感じていた
  • 回答者は苛立った顧客からのクレーム対応を課題として感じていた

二つの市場には以下のような共通点もありました:

  • 回答者は効率的なサービスを提供することが極めて困難であると感じていた
  • 最大の課題であり、顧客からのクレームの主な原因となっているのは、腕時計の問題点や正確なサービス価格について、その場で明確な回答を提供できないことだった

このアンケートによって、店舗スタッフが抱えているアフターサービスの課題について、ブルガリや当社でも把握しきれていなかった新しいインサイトを得ることができました。

店舗での実態調査

次に実施したのは、日本および中国のブルガリ店舗に赴き、実際のアフターサービスの対応現場を見学し、上質なサービスを提供する妨げとなっている要因を明らかにすることでした。調査は両国の店舗マネージャーに対するインタビューと、様々な経験年数の店舗スタッフに対する抜き打ち調査から成り、その結果、以下の二点が主要な問題点として浮き彫りになりました。

一つ目の問題点としては、アンケート調査でも指摘されたように、修理費用や故障の原因について店舗スタッフが明確な回答を提供できないことで、その場で情報が欲しい顧客との間で摩擦が生じていることでした。これに加えて、中国での課題として挙げられたように、腕時計のモデルを特定できないことや価格表を適切に使用できないことが重なると、店舗スタッフは十分な知識がない状況で顧客からのプレッシャーに対応しなければならないという非常に困難な立場に立たされることになります。

二つ目の問題点は、アフターサービスに関わる工程には体系化されていなステップが多々あり、店舗スタッフはすべての工程において積極的に介入していかなければならないという点です。サービスセンターは顧客とは直接やり取りをしないため、アフターサービスの依頼一件につき店舗スタッフは大きく分けて四つの役割を担うことになります。まずはアフターサービスの依頼を整理し、サービスセンターからの状況報告を確認したうえで、最終的な見積もり内容について顧客の了承を取り付け、腕時計の返却のために再度顧客と連絡を取り合うところまでを対応しなければなりません。社内システムが遅いうえ十分にローカライズされておらず、切断されることもあり、また依頼内容の変更などの重要な更新情報があった場合でも目に見える通知が送られてこないなど、すべてのステップが冗長化しているという状況でした。システムの遅さをカバーするために、実店舗では紙ベースの記入フォームを使用していましたが、最終的にはシステムに情報を入力する必要があるため、結局二度手間になっていました。

ブルガリ ウィザードの導入

市場調査で得られた情報をもとに、ブルガリのアフターサービスが抱えている問題点を一度にすべて解決できるUXコンセプトの設計に着手し始めました。

当社が掲げた主な目標:

  • 店舗スタッフの責任を軽減し、適切な顧客対応ができる環境を提供する
  • アフターサービスに関わるすべてのステップを一元化・合理化し、同時にペーパーレス化を実現する
  • 実店舗での顧客とのやり取りに適した方法ですべてのステップの体系化を行う
  • 各ユーザーや市場に対応した言語でツールを提供する

特に注力したのが、店舗スタッフの仕事量と、顧客およびサービスセンター両者からのプレッシャーを軽減させることでした。従来から店舗スタッフはあくまで「マネージャー」であり、最終的な「意思決定者」であるサービスセンターと顧客との間を取り次ぐ立場でしかありません。しかし、顧客側は店舗スタッフをブルガリを代表する「意思決定者」として見ており、スタッフは過酷なプレッシャーに晒されることになります。そうしたプレッシャーの中、専門の資格がないにもかかわらず顧客からの要望を調整する必要があり、またスピーディーに依頼を処理できるツールがない中でも急ぎの状況に対応しなければなりませんでした。

以上を踏まえて、店舗スタッフの負担となっていたプレッシャーや責任を肩代わりしてくれるアプリケーション、ブルガリ ウィザードの考案に至りました。顧客の視点からするとブルガリ ウィザードは「意思決定者」であるとともに「マネージャー」の役割も果たします:

  • 意思決定者: 腕時計と不具合に関する情報をもとに、ベーシックサービスとフルサービスのどちらが必要なのかをその場で自動的に計算を行い、価格表に基づいた概算見積もりを作成する
  • メッセンジャー: 最終的な見積もりが準備できたタイミングと店頭受け取りが可能になったタイミングで顧客にメールを送信する

ブルガリ ウィザードの実装

コンセプトの検証のために、まずはブルガリ ウィザードのプロトタイプを作成し、各国の店舗スタッフに試用してもらいました。そこからのフィードバックをもとに微調整を繰り返し、使用者のニーズにより良く応えられるものを目指しました。最終的には、ブルガリの全スタッフが最高のパフォーマンスを発揮する手助けとなるアフターサービスアプリケーションの完成に至りました。

これまでは紙ベースものとデジタルのものが混在し、店舗スタッフと顧客、サービスセンター間で雑多なやり取りが必要だったアフターサービスの工程は、完成版ブルガリ ウィザードの導入によって一元化できるようになり、効率がよく質の高い業務管理が可能になりました。また、腕時計のモデルの特定やCRMプラットフォームへの顧客情報の入力など、アフターサービスにかかわるすべての工程をウィザード に追加することで、経験年数を問わず全レベルの店舗スタッフが業務を容易に進められるようになりました。同時に、顧客の要望に慎重に対応することで、顧客視点からのアフターサービスの質を高め、これによりブランドイメージの向上にもつながります。以上のことがすべてペーパーレスで可能になるという、まさに魔法のようなツールです。

まとめ

市場調査で得られた情報をもとに当社がコンセプトの考案からUI/UXデザインまでを担当したブルガリ ウィザードは、構築工程はブルガリの社内チームが担当し、最終的に社内プラットフォームに直接組み込まれる形となりました。ウィザードはアフターサービスの工程を合理化するためのコアソリューションとして、各国の市場で導入されています。このアプリケーションのおかげでスタッフの仕事量が軽減し、安心して顧客対応にあたれるようになりました。本プロジェクトは、リテールテクノロジーの導入によって主要なビジネス・プロセスの自動化を実現し、既存システムに組み込むことでパフォーマンスと生産性の向上に貢献した貴重な実例となりました。

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