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ユーザー調査を行う際に気をつけたい4つの重要ポイント

デジタル化の中心には常に「人」がいます。デジタルプロダクトやサービスの開発にあたり、ユーザー第一の考えが極めて重要になってくるのはそのためです。しかしながら、相手の立場になって物事を考えるというのは口で言うほど簡単なことではありません。私たちの物の捉え方は、それぞれが培ってきた知識や経験、外部からの刺激によって縛られてしまっています。そうした中、プロダクトの方向性は正しいのか、実情を踏まえたインサイトを獲得するうえで役立ってくるのがユーザー調査です。今回は、デジタルプロダクトおよびサービスの成功に欠かせないユーザー調査について、気をつけたい4つの重要ポイントをご紹介いたします。

ユーザーは誰なのか

プロダクトやサービスの設計においては、ユーザーは誰なのか、どのような行動様式を取るのか、彼らのニーズや使用目的などを明確にしておく必要があります。言うまでもなく、こうした特性はプロダクトやサービスごとに異なります。たとえば、主に50代の従業員による使用を想定した社内ツールであれば、ユーザーがデジタルツールに不慣れな可能性や、視力低下をきたしている可能性を考慮しておく必要があります。6歳未満の子供向けのゲームアプリであれば、ユーザーにとって分かりやすく、関心を持ってもらえる内容にするために、テキストよりもビジュアルに重きを置く必要があるかもしれません。ターゲットユーザーのペルソナの構築またはインタビューを行うことで(可能であればその両方)、メインユーザーを明確に把握しながら事前に想定していたものとのすり合わせを行うことができ、真に必要とされるプロダクトやサービスの設計が可能になります。この情報があることで、無計画に設計を行うよりも、より的確な仮説に基づきながらプロセスを進めることができます。

具体例を挙げると、マルチブランドのフレグランスを扱う販売代理店、L’Atelier Des Parfumsのオンラインサイト立ち上げにあたり、当社では実店舗の既存顧客に対する実態調査を実施しました。その結果、顧客のほとんどが同じフレグランスをリピートせずに、別の商品を選んでいることがわかったのです。これは、調査を実施していなければ見落としていたインサイトでした。

根本原因に対処できているか

問題解決において重要なのは、その根本原因を探ることにあります。表層に現れている問題というのは、より深層にある原因によって引き起こされていることが多く、そのベースにある問題点はすぐに顕在化するものではありません。本当の意味での問題解決とは、その根本原因を特定し、対処することで、そこから生じた様々な影響を解消していくことにあります。

問題点の全体像を把握するためには、すべてのステークホルダーを巻き込みながら、エンドユーザーの意見に耳を傾けることが非常に重要であると考えます。最終的にエンドユーザーがプロダクトやサービスの提供価値に納得しない限りは、成功は難しいでしょう。

当社が開発を支援したBulgariの腕時計修理のアフターサービス業務を合理化するための社内ツールがその良い例です。アフターサービスの工程に関わるスタッフは、修理依頼の効率性について、それぞれが異なった見解を持っていました。全レベルのスタッフの意見を聞くことで、根本原因から派生したすべての問題に対処しながら、顧客から店舗スタッフ、サービスセンタースタッフまで、すべてのユーザーの声を反映したソリューションの開発が実現しました。

プロダクトやサービスの方向性は合っているのか

上記の2点では、プロダクトやサービスの早期開発段階においてユーザー調査を導入することの利点についてご説明いたしました。しかし、プロダクトやサービスの真の実用性についてはこの段階では判断できません。ここからさらに一歩踏み込み、ユーザーテストを実施することで、ワイヤフレームやプロトタイプ、既存プロダクトの有用性(または無用性)を検証する段階に移ります。ユーザーがプロダクトやサービスの利用時に実際にどのような行動をとっているのか、どこでつまずく傾向にあるのか、ユーザーの期待やニーズに沿えていない部分はあるかなど、注意して見ていく必要があります。言葉によるフィードバックも重要ですが、実際の使用状況を観察することで、改善点が見えてくるケースも多々あります。

当社では、iRobot社のウェブサイト刷新にあたり、ユーザーが感じている不満点を明確にするための対面および遠隔でのユーザーテストを実施しました。サイト訪問者が特に苦労していたのが、メインコンテンツである製品情報を探し出すことで、カルーセルスライダーなどを駆使したUIデザインの複雑性が、サイトでの購入を妨げている要因だったことが判明しました。

プロダクトやサービスが「最終形」に結びつくまで、このプロセスを何度も繰り返していきます。そうすることで、時間とコストの節約になるばかりでなく、取り返しのつかない大きな問題が発生する可能性も事前に防げるのです。

最適化や改善の方向性は明確であるか

最終的にプロダクトやサービスがユーザーの元に届けられた後も、ユーザー調査を続けることで、ユーザー特性やプロダクトの使われ方などの情報を集め、改善や最適化のヒントを得ていくことも重要です。具体的には、ECサイトの離脱率が高いページを特定し、改善点を探すことなどが考えられます。当社でも、ジュエリーブランドPandoraのECサイトにおいて、特定のページのレイアウトを調整することで、ユーザー体験の向上に貢献できたという実例があります。

他にも、分析ツールを正しく活用することで、新たなターゲットユーザーとなり得る消費者特性の特定など、商機の拡大も視野に入れた取り組みも重要です。問題点と新しい機会の両方を明確にしておくことで、移りゆくユーザーのニーズや目まぐるしく変化し続ける世の中に対応したプロダクトやサービスの提供が実現します。

優れたデジタルプロダクトやサービスは、すべてエンドユーザーを第一に考えて設計されています。エンドユーザーを中心に考えた設計を進めていくことで、実際に直面している問題を、現実的かつ効果的な方法で解決していくことができます。ユーザーの声に耳を傾けること。非常にシンプルな解決策ではないでしょうか。

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